親孝行ゆえの悲劇、永遠に奪われた若い命〜なぜ20代で建物の下敷きになる「窒息死」が多発したのか〜【阪神・淡路大震災25年目の真実❹】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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親孝行ゆえの悲劇、永遠に奪われた若い命〜なぜ20代で建物の下敷きになる「窒息死」が多発したのか〜【阪神・淡路大震災25年目の真実❹】

あなたと愛する人の命を守るためのメッセージ④

神戸市長田区菅原地区/写真提供:神戸市

◆永遠に奪われた未来

 大阪府内の見晴らしのよい高台にMさんが眠る墓がある。墓石に刻まれている日付は「1995・1・17」
  大学4年生でまもなく卒業予定だったMさんは就職が内定していた。小さい頃からの夢だった全国紙の新聞記者だった。しかしあの日、その未来は永遠に奪われた。
 家族の墓参に同行させていただいた初冬の日、その墓石の日付を長い間見つめた後、声を絞るように話されたMさん母の言葉が重く響いている。
「地震以来、あの時ああしていれば、もっとこうしていれば……。そんな気持ちを乗り越えようとしてきた歳月でした」
 そして、1冊のノートを見せてくれた。そこには、Mさんの母が自分の気持ちと向き合うために詠んだという歌がいくつも記されていた。

悲しさを 増すと知りつつ 078、078……  また押してみる
御国とは どこですかどこですか この母に 新しい住所 電話教えて
壊れた家から 持ち帰りきたTシャツ パンツ 洗って畳みぬ もう着ない子に
逝きてすぐに 23歳になりし子の 写真も少し 大人びてきぬ

【註】「078」とは神戸市の市外局番/「御国(みくに)」とは天国のこと

『震度7 何が生死を分けたのか』より構成)


25年前の本日、1995年1月17日午前5時46分に発生した兵庫県南部地震によって亡くなられた6434名の犠牲者の方々に衷心より哀悼の意を表するとともにご遺族の皆様方にお悔やみ申し上げます。2020年1月17日『BEST TIMES』編集部

 

KEYWORDS:

震度7 何が生死を分けたのか
NHKスペシャル取材班

 

都市直下地震で人はどのように命は奪われるのか

第42回放送文化基金奨励賞受賞
大反響となった「NHKスペシャル」待望の書籍化!
本書では、新たに追加取材を行い、番組で放送できなかった内容までフォロー
来るべき都市直下地震を見すえ
今、命を守るために何をすべきなのか
その対策を、提示します。
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「本当にこんなものが残っていたとは……」(本文より)

阪神・淡路大震災 21年目に初めて明らかにされた
当日亡くなられた5036人の「死体検案書」のデータ。
死因、死亡時刻を詳細に記したデータが物語る「意外な」事実。
一人ひとりがどのように死に至ったのか。
「震災死」の実態をNHKの最新技術(データビジュアライゼーション)で
完全「可視化」(巻頭カラー口絵8P)
震災死の経過を「3つの時間帯」で検証した。
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【3つの時間帯とその「意外な事実」】
21年間「埋もれていた」5036人の死因、死亡時刻を詳細に記した検案書データ。
そこには地震発生から「3つの時間」経過とともに
犠牲者の実像、その「意外な事実」が明らかにされた。
1 地震発生直後:当日亡くなられた76%(=3842人死亡)の死因
なぜ、圧死(即死)はわずか8%だったのか!
2 地震発生1時間後以降:85人の命を奪った「謎の火災」の原因
なぜ、92件の火災が遅れて発生したのか!
3 地震発生5時間後以降:助けを待った477人が死亡した理由
なぜ、救助隊は交通渋滞に阻まれたのか!

本書はこの「3つの時間帯」で起こった意外な事実を科学的に検証。
浮き上がった「命を守るための課題」と「救えた命」の可能性を探るとともに
首都直下地震など、次の大地震に向けた対策を提示する。

【目次】

カラー口絵 序 章 5036人の死 そこには救えた命があった
第1章 命を奪う「窒息死」の真相 自身発生直後
第2章 ある大学生の死 繰り返される悲劇・進まない耐震化
コラム1 被害のないマンションでも死者が 現代への警告
第3章 時間差火災の脅威 地震発生から1時間後以降
第4章 データが解き明かす通電火災21年目の真実
第5章 通電火災に備えよ
コラム2 〝命の記録〟を見つめる 新たな分析手法と防災
第6章 渋滞に奪われた命 地震発生から5時間後以降
第7章 いまだ進まない根本的対策

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  • NHKスペシャル取材班
  • 2016.10.26